〜 も く じ 〜

1.フクジュソウ(福寿草)
2.ウメ(梅)
3.スイセン(水仙)
4.レンギョウ(連翹)
5.スズラン(鈴蘭)
6.ヤマブキ(山吹)
7.ツツジ(躑躅)
8.ボタン(牡丹)
9.アヤメ(菖蒲)
10.キショウブ(黄菖蒲)
11.ヤブカンゾウ(藪萱草)
12.ギボウシ(擬宝珠)
13.スモモ(李)
14.モモ(桃)
15.ユウスゲ(夕菅)
16.タチアオイ(立葵)
17.ノウゼンカズラ(凌霄花)
18.ヒツジグサ(未草)
19.ハス(紅蓮)
20.ハス(白蓮)
21.ヤマボウシ(山法師)
22.ヤマユリ(山百合)
23.キキョウ(桔梗)
24.サクランボウ(西洋実桜)
25.ナシ(梨)
26.クルミ(胡桃)
27.ザクロ(石榴)
28.リンゴ(林檎)
29.カリン(花梨)
30.クリ(栗)
31.ブドウ(葡萄)
32.イチジク(無花果)
33.カキ(柿)
34.キク(菊)
35.ヤマナシ(山梨)
 

 

 


キンポウゲ科フクジュソウ属の多年草。日本各地、およびアジア北部に分布。新年を祝う花として、ガンジツソウとも。

 夜になって風が止んだ。
 みしみし気温が落ちていく。
 梅の根もとの落葉の中で、フクジュソウが三つのつぼみを寄せ合っている。
 一番大きなつぼみがつぶやいた。
 
真冬から咲かなければならないこの性が、おれはうらめしい。せめてもう少し陽気が暖かくなってからだったらなあ――」
 
ほらほら、またはじまったぞ」
 二番目のつぼみがあきれたようにため息をつく。
 頭にかかる落葉を外しながら、三番目の小さなつぼみが、りんとして言う。
 
春の訪れを告げるわたしたちがいなかったら、タンポポさんやレンゲさんたちはいつ咲いていいのか、順番の見当がつかないわよ。本当は恐ろしい毒草のわたしたちを、福を寿ぐ草とまで昔の人が名づけてくれたことを忘れてしまったの?」
 兄は傷ついている。
 近くのヒイラギが棘のある葉を、夜ごと兄の頭に振り落としつづけるのだ。
 相手にされない彼は、月に向かって話しかけた。
 誰がおれを生んだのかい、そもそもなんでフクジュソウなのかい…」
 突如、赤松林の梢がゴオーッと鳴り、彼のくりごとをかき消した。
 八ヶ岳颪の始まりだ。
 月が西方へ吹き飛ばされるころ、甲斐駒ヶ岳がばら色に染まった。
 地中でもぐらが、まあるい体をいっそう固くして、寝言を言った。
 
モルゲン・ロート……」
 目の無いもぐらは、心の目で真実を感知するのだ。
 三つのつぼみはおし黙ったまま、東に傾き、頭をもたげた。
 そして、光の矢に射抜かれると、金の盃の花びらを、おごそかに開きはじめた。

*1――冬期、八ヶ岳から南の甲府盆地に吹きおろす強風。名物のひとつである。
*2――(ドイツ語)朝のばら色、すなわち朝焼け。



バラ科サクラ属の落葉高木。中国原産といわれている。古く日本に渡来。早春、葉に先だって花を開く。品種多数。果実は梅干、梅漬にする。

 はな、といえばさくらだが、大昔、万葉のころはうめだった」
 荒れた休耕田がつづく畦道のわきに立つ、一本の老梅が言った。
 夏は緑の、冬には褐色のアレチウリの蔓に、梅の木まるごと覆われて、月の夜などくっきりドーム状の樹影を落としていた。
  
わしはちかぢか伐り倒されるらしい。
 せっせと木を伐るのはヒトの習い、ヒトの病い。それはいいが、一本伐るたび、ヒトひとりのこころが壊れることは、承知か。
 そのうえ、野山に植樹するヒトの姿はあまり目にしない。
 新しい道のために、わしが邪魔だとさ。
 ついこの間、実をもぎにきた近くの村の若い男女がそう言っていた。
 良い仲らしく、目の覚めるような鮮やかな青梅を互いの口のなかへ押し込み、くっくっと笑っていたっけ。
 わしは、はらはらしたね。
 恃~は食うとも核食うな、中で天神寝てござる掾c…、なま梅の核には毒があり腹下ししやすいのを知ってか知らずか。
 あれは四半世紀ぐらい前からだったか……、休耕田が広がるにつれ、草はむろん木まで茂り、みるからに一丁前の林があちこちにできた。
 待ってましたとばかり、沢山の虫や小鳥、キジ、イタチ、タヌキまで、いやいや神々さえも棲みついて、梅に鴬の雅びもとうに越えたにぎわい。なにやら古代の眺めもかくやにと、思ったもんだ。
 植物はヒトの歴史よりうーんと古いんだしね。
 恷ゥ然にやさしい揩ェ流行ことば。ヒトの自惚れも極まった。
 そんなおためごかしを言われなくたって、まだまだ八ヶ岳の山麓にいのちの余力はあるってもんさ。伐り倒されても、わしはいつかまた、戻ってくる」。


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